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隼山のテロワール

この土地が、あの一杯をつくる。

― 山梨市牧丘町、隼山のテロワール ―

ワインを飲んだとき、その向こうにある風景を想像したことはありますか。

葡萄が育った場所。
畑を吹き抜ける風。
降り注ぐ太陽。
そして、一年を通して葡萄と向き合う人。

フジクレールのワイン「隼山」の故郷は、山梨県山梨市牧丘町。

山々に囲まれたこの土地に、「隼山」と呼ばれる丘陵があります。

葡萄畑が広がるのは、標高約680〜700m。

眼下には牧丘の町並みが広がり、その向こうには幾重にも山々が連なります。

フジクレールにとって隼山は、単なる葡萄の産地ではありません。

長い時間をかけて栽培家とともに葡萄と向き合い、この土地ならではのワインを追い求めてきた、大切な場所です。

今回はワインになる前の物語。

「隼山」という土地をご紹介いたします。

標高約700m。山の上で育つ葡萄

隼山の大きな特徴のひとつが、その標高です。

葡萄畑は標高約680〜700mの高所に広がり、山々に囲まれた環境の中で葡萄が育ちます。

標高が高く、昼夜の寒暖差が生まれるこの場所で、葡萄は季節の変化を受けながら成熟していきます。

私たちが大切にしているのは、ただ糖度を高めることではありません。

果実がしっかりと熟しながら、ワインになったときに味わいを支える美しい酸を残すこと。

甘さ、香り、酸。

そのバランスを見ながら、葡萄がもっとも良い表情を見せる瞬間を待ちます。

ワインの味わいは、醸造場に葡萄が届いてから初めて生まれるものではありません。

その年の太陽も、雨も、気温も。すべては、この畑から始まっています。

隼山とともに、葡萄を育てる人

そして、隼山を語るうえで欠かせない存在が、栽培家の久保田氏です。

長年この地で葡萄と向き合い、隼山の畑を知り尽くしてきた久保田氏。フジクレールの栽培顧問としても、私たちのワインづくりを葡萄栽培の面から支えています。

そんな久保田氏に、葡萄づくりの面白さについて尋ねたとき、返ってきたのは意外な言葉でした。

「面白いと感じることは、ないですね。」

一見そっけなくも聞こえるその言葉の裏には、収穫を迎えるまで結果の分からない葡萄づくりの難しさと、シーズンを通して続く緊張感があります。

天候は毎年異なり、葡萄も決して同じようには育ちません。
ひとつの判断の遅れや間違いが、病気につながることもある。畑では葡萄のわずかな変化を見ながら、その時々で判断を重ねていきます。

冬の剪定から、春の芽吹き、夏の栽培管理、そして秋の収穫まで。

一年を通して葡萄と向き合い続ける中で、久保田氏が変わらず大切にしていることがあります。

「健全で、人に喜ばれる葡萄をつくりたい。」

特別なことを語るのではなく、目の前の葡萄を健全に育てるために、必要な仕事を積み重ねていく。

その実直な姿勢と、この土地で培われてきた経験が、隼山の葡萄を支えています。

土地の個性だけでは、ワインは生まれない。
その土地を知り、葡萄と向き合う人がいてこそ、テロワールは一本のワインへとつながっていきます。

同じ山から、二つの個性。

隼山からフジクレールに届く葡萄からは、二つの個性の異なるワインが生まれています。

ひとつは、日本を代表する白ワイン用品種、甲州

もうひとつは、日本生まれの黒葡萄、マスカット・ベーリーA

同じ隼山で育っていても、品種が違えば、その表情も異なります。

甲州から生まれる「隼山甲州 樽発酵」は、甲州の繊細な果実味や酸を大切にしながら、樽での発酵・熟成によって奥行きを与えた白ワイン。

そして「隼山マスカット・ベーリーA」は、赤い果実を思わせる華やかさと、しなやかな酸、やわらかなタンニンを持つ赤ワインです。

白と赤。

品種も、醸造方法も、味わいも異なる二本。

それでも私たちが目指しているものには、共通する考えがあります。

それは、

「隼山で育った葡萄を、どうワインの中に残すか。」

ということです。

土地を、ワインの中へ。

自然酵母由来によるアルコール発酵、無補糖・無補酸。
フジクレールでは人為的な操作に頼らず、ぶどう本来の個性を引き出す引き出す醸造を行っています。

必要以上に味わいをつくり込まない。

それが、現在フジクレールが大切にしている考え方です。

たとえば「隼山マスカット・ベーリーA 2023」では、自然酵母による発酵を行い、補糖・補酸をせず、中古樽で11ヶ月熟成させています。

強い樽香をつけるためではなく、葡萄そのものの果実味や酸を大切にしながら、ゆっくりとワインを整えていくためです。

甲州にも、マスカット・ベーリーAにも、それぞれの個性があります。

そして、その葡萄の奥には「隼山」という共通の土地があります。

私たちがワインを通して表現したいのは、品種の特徴だけではありません。

その葡萄が、どこで、誰によって育てられたのか。

そこまで含めて一本のワインとして届けたいと考えています。

一杯の向こうに、隼山がある。

ワインが出来上がれば、畑の姿は見えなくなります。

グラスの中にあるのは、白や赤の液体だけ。

けれど、その一杯が生まれるまでには、標高約700mの山があり、季節ごとに姿を変える葡萄畑があり、一年を通して葡萄に向き合う人がいます。

風も、土も、標高も、人も。

そのすべてが重なり合って、一粒の葡萄になり、やがて一本のワインになっていきます。

次に「隼山」のワインをグラスに注ぐとき。

ほんの少しだけ、この山の風景を思い浮かべてみてください。

甲州とマスカット・ベーリーA。

それぞれのグラスの中に、同じ隼山がどのように現れているのか。

二つのワインを飲み比べてみるのも、この土地を知るひとつの楽しみ方です。

—ひとつの山、ふたつのワイン。—

フジクレール 隼山甲州2023樽発酵

凝縮感のある果実味に加え、スモーキーなニュアンスと桃のような優しい甘みが調和し、厚みのある味わいが広がります。
当社最高峰の甲州ワインとして、芳醇な香りと深い余韻をお楽しみいただけます。

フジクレール 隼山マスカット・ベーリーA2023

赤いベリーを思わせる甘やかな香りに、しなやかな酸とやわらかなタンニン。果実味を活かしながらも上品な余韻を備えた、品格ある味わいの1本です。